main   やっぱり愛しかないでしょ≫        






今日も天気は快晴だ。最近雨が降らない。
別に雨が好きなわけじゃないけど、雨音はなんか落ち着く。
そう、あいつといるように。


花月咲也と出逢ったのはいつだっただろう。
もうあまりにも昔過ぎてわからなくなってしまった。
でも、咲也と出逢って俺はかわった。
人に『愛される』ことと人を『愛する』ことを知ったから。
咲也といると、なんだかドキドキするけれど
心のどこかで安心している。
今はもう、かけがえのない存在。







1.

親の勧めでしかたなく入学した男子校。
その生活は、楽しいはずもなく。
なるべく俺は他人と深くかかわることのないように毎日を過ごしていた。
1年、2年は平穏な毎日だった。
3年の時も最初はよかったんだ。
たいして仲のいい奴もいなかったし、それはそれで満足していた。
…なのに、文化祭が終わった後から、アイツは…俺の周りを変えていった。

それが当たり前のように。





「朝臣っ!」

遠くの方から俺を呼ぶ声がする。
顔は見なくても、だいたい想像できてしまう。
こんな風に俺を呼ぶ奴なんて、アイツしかいないのだから。
無視してスタスタと歩き続けていたら、後ろからがばぁ。と抱きつかれる。
ホントにうざいから、その物体を引きずりながらも俺は足を止めることはしなかった。

「あっ、朝臣〜。」

その物体が情けない声を出しているけれど、俺は相手をするほど暇ではないのだ。
通り過ぎる奴らがすごいモノを見るかのように立ち止まったりする。
でもある程度の奴らはいつものことだと笑っている。
こういうのも実はうざかったりするのだが、いちいち怒鳴るのもめんどくさい。
慣れてしまったのもあるけれど。


「朝臣〜。お前、また花月なんかをくっつけて…」

笑いをこらえるかのように俺に声をかけるのは、
唯一、この学校で俺が友達だといえる存在・奈津原秋史なつはらあきふみだった。

「好きでくっつけてるわけじゃねーよ。ったく、見てないでどうにかしろよな。」
「いいじゃねえか。楽しくて。」

秋史は俺の頭を撫でると、また笑う。
秋史以外にこんなことされたらマジで嫌だけど、秋史にされるのは嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。

しばらくぼーっ。と秋史を見ていたけれど目があってあわててそらした。
秋史はそんな俺に首をかしげながらも、秋史は俺の背中の物体に声をかけた。

「花月もたいへんだよな〜。こんなんが相手でさ。」

秋史は咲也のズボンについた埃をいつものようにはらってやると
「ごくろうさん。」と言いながらまた笑った。

「まぁね。ほらよく言うっしょ。好きになった方が負け≠チて。」
咲也も笑いながら、「まだまだあきらめないってことで!」とか言ってやがる。
まったく…懲りない奴。



花月咲也は一応俺のクラスメイトだったりする。
文化祭前日の日に声をかけられるまで、一度も話したことなんかなかったけれど。

文化祭は男子校ならでは、というか女装をさせられ『喫茶店』をやった。
抵抗して一度は、どうにかボーイの役になったのに
女装をした奴があまりにも似合わなすぎて、結局女役をさせられたのだ。
その時、衣装を交換したのが咲也だった。
第一印象は綺麗な奴。
それがくつがえされたのは、その2日後。
その時の印象は、たんなるヘンな奴だった。

「ねぇ、鈴村って彼氏いんの?好きな奴は?俺は?俺じゃダメかな?」

女役のためにきたウェイトレス姿の俺の手を握って、
アイツは…咲也は…クラスメイトの目の前で俺のことを口説いたのだ。
もちろん俺は冷たく言ってやった。

「誰なのかもわかんねぇ、しかも男と付き合う趣味は俺にはねえよ。」

その瞬間から、俺と咲也の戦いは始まったのだった。






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