main やっぱり愛しかないでしょ≫ 1 2 3 5 6
4.
最近、知らないうちに秋史を見ていたりする。
これが恋≠ネのかたんなる独占欲≠ネのかよくわからないけれど。
もしかしたら一種のあこがれ≠ネのかもしれない。
愛し、愛してくれる存在がいる。
俺が求めていたモノを秋史はもっているから…
俺の部屋で秋史と2人で来週の最後の判定模試のための勉強をしていた。
「人に愛されたいよなぁ〜…。」
「はぁ?どうしたんだよ、最近。」
「いや、秋史が幸せそうだからいいなぁ〜。って思ってさ。」
推薦で大学が決まっている圭佑からのお守りを指差しながら言うと
秋史は、照れた様に笑って、俺の頭を撫でた。
「朝臣はさ、愛されてると思うよ。気づかないだけでさ。」
部屋の隅に置いてあるダンボールを指差し、秋史は続ける。
「ちゃんとさ、考えてみたら?気づいたときには、アイツもう日本にいないかもよ。」
「アイツって…。」
俺の頭の中に浮かぶのは…咲也のまぶしいくらいの笑顔。
「今、朝臣の頭ん中にいる奴だよ。」
秋史が自分の部屋に帰ってから、俺は今まで読んだこともなかった咲也からの手紙を読んだ。
受け取った順番なんてわからないけど、一応下にあるほうから読んでみた。
小さな紙に込められた咲也の気持ち。
読む枚数が増えるたび、その気持ちが大きくなってきているのがわかってくる。
俺のことを本当に『好き』だと想ってくれている。
ほんのちょっとしたことでも咲也は気がついて…
いつも決まって書かれている言葉を読むたび胸が痛い。
『読んでもらえないって知ってるけど、書かずにはいられないんだ。ゴメンね。』
咲也の優しさ。
いつも見てくれていた。
……こんなにも、俺なんかを好きでいてくれた。気づくの遅すぎた。
その日は、数えきれないほどの咲也からの手紙に埋もれて眠った。
初めての心地よさを感じながら。
「咲也…行っちゃったのか。」
幸せの後には、不幸がくる。
それをあらためて感じた。
そして初めて神様というものを恨んだ。信じていたわけじゃないけれど。
恨まずにはいられなかった。
これほどまでに、失くしたくないと思った人は…初めてだった。
咲也からの手紙を読んだ次の日。
咲也が予定を繰り上げてアメリカに留学したことを知った。
いつの間にか咲也の使っていたロッカーや机の中は空っぽで、もう逢えないんだと解ってしまった。
もう…二度と逢えないんだと。
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