main やっぱり愛しかないでしょ≫ 1 3 4 5 6
2.
背中に斜め後ろから視線を感じる。
どうせ咲也だろう。
俺は後ろを振り返ることなく、黒板にずらずらと書かれた数式をノートに書いていた。
するとトントンと背中をたたかれた。
咲也の方を見ることなく後ろを振り返った。
「なに?」
「まわってきた。お前に。」
小さく折りたたまれた紙が俺に手渡される。
まわし始めた奴はいつものごとく咲也だろう。
俺はそれを見ることなく、いつものようにカバンの中につっこんだ。
こういうのは気軽に捨てられないから始末が悪い。
一度教室のゴミ箱に捨てたら、それをわざわざ取り出して大きな声で読み始める奴がいて
書いた咲也よりも俺の方が恥ずかしい思いをしたことがある。
それから俺は寮の自分の部屋にあったダンボールに咲也からの手紙を入れるようにしている。
いつか燃やしてやろうと思って。
「朝臣ってさ、ホントにに花月のこと嫌いなのか?」
食堂で食後のデザートだといってメロンパンをかじっていた秋史がふと俺に聞いてきた。
「なんでそんなこと聞くわけ?わかってんだろ。嫌いなことぐらい。」
俺はむっ。としながら、お茶を飲んだ。
「でもさ、朝臣を見てると好きなんじゃないかなぁ。って思えちゃってね。」
二個目のメロンパンをおいしそうに食べながら秋史は続ける。
「でもあと少しだよね。花月が朝臣にアタックすんのも。」
「はぁ?なんでそんな根拠のねぇーこと言えんだよ。」
「だってさ、もう少ししたら卒業だし。花月、留学すんだろ。」
なんだかわからないけれど、心のどこかで寂しさを感じた。
もうすぐで咲也との戦いも終わってしまう。
もうすぐ…
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