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 待ち望んでいた一日目


 昨夜は興奮してなかなか寝つけれなかった
 眠い眼をこすって、目蓋を上げる
 いつも眠そうな、無気力な表情をしているが、今日ほど目蓋が落ちている日はな
 いだろう


 小さく欠伸をつき、鏡の中の自分を見つける


「……」


―――覇気のない表情(カオ)
      でも、眼は生きてるね…

 途端、鏡の中の顔が厭(イヤ)な笑みを浮かべる


―――だってさ、今日からだよ?
      復讐という名の裏切りが実行されるのは

 少しずつちょっとずつ

 ウサギみたいに速い速度は何処かで崩れるから
 それにあの子は警戒心が強いから
 のろまな亀が歩を進めていく位のゆっくりさで、あの子を追い詰めていこう


 最後にダレも頼れなくなるように…

 最後に自分以外を信用できなくなるように…


 そして、



 奈落の深い闇へ

 突き落としてあげるよ、  ナルト




    ++IF... ...始={+





 第一印象は最悪。
 思っていたよりもダメじゃない?

 古典的なイタズラに引っかかるオレもオレなんだけどね。

 でもしょうがないでしょ。
 お前のせいだよ。
 興奮して、些細なことにも頭が回らなくなってたみたい。

 だからね、言ってやったよ。

「ん〜、なんていうか。お前ら嫌いだ」 

 特にうずまきナルト、お前ね。
 オレは特別ナルトを見る時の眼を冷たくしていった。


 憎しみの視線に慣れたあの子が此方を見る前に視線を逸らす。
 眼の端にナルトの歪んだ表情が見えたが、いい気味。


「いいか?お前らはもう下忍だ。アカデミー生じゃあない。」

 オレはサスケとサクラに視線を向けて、これからのことについて話し始めた。

「だから、何処かで戦争が起きればかり出されるだろうし、
 任務は忠実に遂行しなくちゃいけない。例え、親兄弟が死のうともだ」

 いくら下忍になったばかりとはいえ、さすがは忍びの心得を得ている子供たちだ。
 神妙な面持ちで、こっくりと頷く。

「…それぐらい」
「わかってるわ…」


 うんうん、
 馬鹿は嫌いじゃあないよ?


 オレはにっこりと笑って、頷きに応じる。



―――でもね、

「オレだって!任務はちゃんとやるってばよっ」


 お前は例外。

 そうやってサスケやサクラと同じように首を振っているけれど、
 お前にはいやしないデショ?親兄弟なんて。(サスケは微妙だけど)

 いや、むしろお前が死んでしまえばイイと思っている輩ばかりなんだよ?


 それでも、
 お前は守るっていうんだね、ナルト。


 先生笑えてきちゃうよ。
 ほんと。



「じゃあ、」

 ナルトへは視線を送らず、本題へ入ろうと、オレが口を開くと、

「先生ってば、強いの!?なんていう名前なんだってば?!」

 ナルトは無視されまいと、大きなアクションをしながら大声を上げた。


「……」
「ねえ?なんていうんだってば?」

 教えて、教えて!
 と子犬のように懐いてくるナルトにオレは敢えて、冷たい目線と盛大な溜め息を返してやった。
 途端に、それだけでナルトはびくっと、身体を小さく揺らした。


「あのね、お前」
「なんだってばよ?」

 首をかしげて、オレを見上げてくる額宛をオレは指ではじいた。

「それをこれから言おうとしてるの。水を差すんじゃあないよ」
「あ、…うっ…」

 自分がとんでもなく先走っていたことに気づいたナルトは額宛をさすりながら、大人しく下がった。


 その隣でサクラが、「あんたって、馬鹿ねぇ〜」と、突っ込みを入れている。
 サスケも無言だったが、先走ってすべったナルトのことを僅かに鼻で笑っていた。


「ハイハイ。じゃあね、自己紹介するけど。そっちからよろしく」







 オレの合図で始まった自己紹介はナルトからサクラ、サクラからサスケへと繋がった。
 そして最後の締めはオレが行った。


「オレの名ははたけカカシ。一応上忍だ。これからお前たちの担任を受け持つ第七班の班長を務める、先生となった。よろしくな」

 オレはにっこりと笑ってオレが受け持つ小さな下忍三人を見回した。
 誰も彼もが期待と不安、
 そして希望を持った瞳でオレを見上げていた。


 その中でもナルトのそれは一際目立っていた。


「先生は強いんだってばよ?」


―――オレへの期待なのかね…

 ひどく冷めた気持ちでそれを見返している。
 先ほど見せた視線と、返した溜め息を忘れているわけじゃないのに。


「うん。上忍だからね」



 この子は人を信じやすい。
 そして、騙されにくい。




―――いいじゃない?
     面白くなってきたよ





 オレは今日初めて、ナルトに心からの笑みを返してやった。




「じゃあ、今日は解散っ。明日の朝またここでな」




 その夜オレはまた、


 明日からどうやってナルトのことを欺いてやろうかと考えて、
 興奮して、
 なかなか眠れなかった。





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作者余談・・・
カカシ厭な先生。