夢々
++夢々02++
いつになく、今日の目覚めは良かった。
それを何故?と考える間もなく、カカシは自分の下半身の状態に固まった。
「オイオイ、嘘でしょ…?盛ったガキじゃないんだから…」
昨夜自分のしでかしたことを全く憶えていないカカシは呆れた溜め息をつくとともに、下肢の後始末をするため、風呂場へと向かった。
ザアアァーッと流れ落ちる冷たい水のおかげでまだ少し眠ったままの頭が冴えてくる。
そういえば、今日は目覚めがいいだけではなく、夢見もよかったのだと思い出した。
大好きなナルト。そのナルトと想いが通じ合って、キスをして…抱き合って……セックスをする夢。
そこまで思い出して鼻の下が伸びていたカカシは顔を慌てて引き締めた。
(ダメだっ…ダメだ…っ!)
頭を振って煩悩を退けようとするが、夢の中のナルトは消えてくれない。
ポタポタっと、肩に落ちる水滴の冷たさに自分の身体が火照っていることに気づく。
「ヤバイ…、どうしよう…。ナルトが頭から離れない」
『せんせぇ…、ヤッ』
ぼわわん、と広がる数々の夢の中のナルトの痴態。その初々しさにカカシは何度となく貪りついたのだ。ナルトを抱いたのが自分だったにせよ、夢の中の自分が羨ましい…。カカシはすぐにでも臨戦状態になる自分のモノに苦笑した。
シャワーから出たカカシは汚れた下着を嫌そうに見つめ、洗濯機の中へ放り込んだ。
スイッチを押せば、ゴウンゴウンと鳴る機械。
それと合わせるかのように朝日の差し込む窓からは、朝を告げる鳥の鳴き声がチュンチュン、と奏でている。
朝はまだまだ始まったばかりだ。
カカシはコーヒーを片手に新聞を見つめる。
今日はいつもよりゆっくりして、任務地へと向かうことが出来そうだ。
* * * * *
周りは木々に囲まれた里から離れた場所だった。
「よぉ〜し。今日は前回に引き続き川の掃除な」
いつもと同じく、時間に遅れて集合場所にやってきたカカシはいつもの如くサクラに突っ込みを入れられ、サスケに白い目で見られた。どれだけ早く起きようとも彼のサイクルは変わらないのだ。それに、今朝は夢の中でのナルトを忘れられずに熱くなる己の身体をおさめるのに時間を要した。
「はいはい。んじゃ、早速とりかかるー。ナルトは下流の方でサスケは上流、サクラは今見える範囲の場所をお願いな」
「はぁーい」
「……」
カカシは誤魔化すようにニッコリと笑うと、今日の任務を促した。その後にやる気があるようなないような返事が続く。
と、
そこで初めて姿はあるのに今までにナルトの声がないことに気づく。
「あれ?…ナルトどうした」
いつもどおりであればサクラと一緒に突っ込みを入れてくるはずである。しかし先から俯き、黙ったままのナルトにカカシは首を傾げた。
「なんか、あったか?」
「…
いが
、…
なにか
、……
んじゃないかよ
……」
「え?なに…ナルト聴こえないよ」
小さな呟きにカカシは問い返す。
「……」
だが、ナルトはもう一度言い返すことをせず、だんまりを決め込んだナルトにカカシは困ったようにサクラたちを見た。
サクラとサスケはカカシの視線に知らない、と首を振った。
(どうしたもんかね…)
様子のおかしいナルトをサクラたちも知らないとなっては、カカシはお手上げである。
相変わらず俯いたままこちらを見ようともしないナルトにカカシは心のどこかで寂しさを感じた。
唯一この時間だけ、ナルトに視線を向けてもらえれるのに、この状態だ。きっと今日明日というわけではなく、暫くはあの希望に満ち満ちた目を向けられることはなくなるのだろう。しかも、よりによってオイシイ夢を見た後なのだ。夢の中で甘えてくるナルトに目の前のナルトは目も合わせようとはしない。あまりの夢と現実のギャップにカカシは泣きそうになった。
「ま、任務は出来るよね」
カカシはひっそりと今朝から二度目の溜め息を零し、ナルトの黄色いふんわりとした頭に手をポンっとおいた。
ただ、それだけだったのに。
「っ!」
「えっ?」
カカシの手がナルトに触れた瞬間、ナルトは大袈裟なほど身体を揺らし、カカシの手を払った。
「ナルト?」
ぶるぶると青褪めた顔で俯くナルトにカカシはいよいよ心配になる。
だからまた手を伸ばし、ナルトを抱き締めようとした。
「触んなっ…!」
バシっと、派手な音を立てて振り払われる自分の手を見て、カカシは呆然とした。
(え……、これってナルトの様子がおかしいんじゃなくて、俺がナルトに嫌われてるの…?)
ぐるぐるぐるぐる。と頭の中を駆け巡る核心に近い予想。
呆然としたカカシと傷ついたような目をするナルトを見て、サクラはハッとしたようにナルトに詰め寄った。
「ちょっと、あんた!何してんのよっ。カカシ先生はあんたを心配してんじゃないっ。
それなのに、その扱いは酷いんじゃないの??」
「……」
「なんとか言いいなさい、ナルトっ」
「……」
「ナルトっ!?」
「サクラ…もう、いい」
「でも、…サスケくん」
「サクラ…っ」
見てみろ、と顎をしゃくるサスケにサクラはその方向を見て目を見開く。
「ちょっと!ナルトっ、あんた何泣いてンのよ…っ」
「ひっ、っく…うぅ…」
初めて見たナルトの泣き顔にサクラはたじろぐ。いつもバカに明るく、笑ってばかりのナルトだからこそその声を殺して涙を流す表情にはくるものがある。
まるで自分がナルトを苛めたようで、サクラは焦った。
そしてもう一人、ナルトの泣き顔に焦る人物がいた。
「な、ナルト?ね、どうしたの…。先生なんかした?」
顔を伏せてなくナルトの表情を見ようと覗き込むカカシにナルトはますます涙を溢れさせた。
「うっ、……!」
新たなナルトの涙にカカシは頭の中がパニックになる。
どうしていいものかと、思案するが、頭が混乱していて上手く働かない。頭上を見上げ、眉を顰める。
(この子にだけ、俺はいつも上手くいかない…)
原因を聞こうにも目も合わしてくれない、話もしてくれない。これでどうしろというのか…。カカシはどうしたものかと思案しているうち、カカシの耳にドサっと何かが倒れる音とサクラの悲鳴とサスケの舌打ちが聞こえてきた。
「ナルトっ!」
見れば、ナルトがサスケの腕の中意識を失って倒れていた。サスケの服に付く土と体勢からして、ナルトの頭が地面に激突する間一髪といったところだろうか。
カカシは素早く駆け寄って、ナルトをサスケの腕の中から自分の中へと奪うように移しかえた。
「ナルトっ?おい、ナルトっ」
何度も頬を叩き呼び掛けても返事のないナルトにカカシは苛立ちを募らせる。
「おい、カカシ」
乱暴に扱うカカシにサスケは声を上げる。
カカシはそれへ無言で返し、立ち上がる。
「今日の任務は中止。俺はナルトを連れて帰る」
「えっ?!おい、カカシっ!」
「カカシ先生?!」
突然の言動に異議を唱えようとするサスケとサクラ。しかし、二人が立ち上がった時には遅く、カカシはナルトを抱えたまま、森の中へ消えていた。
サクラたちに任務中止を言い渡し、ナルトを連れ帰ったカカシ。
力なく腕の中で意識を失ったナルトを己のベッドに寝かせ、カカシは傍らに座った。ナルトの手を取り、包み込む。早く目覚めるように、と願いを込めて。
暫くそうして、ナルトの寝顔を見つめていると、微かに目蓋がピクリと動くのを目にしカカシはハッとした。
「ナルトッ!」
「……せんせ・い…?」
ぼんやりとした目でカカシを見るナルトは、任務地で見せた怯えを含んでいなかった。
カカシはナルトが目が覚めたこととそのことにほっとし、疲れた笑みを見せた。
「ナルト、どこか痛いところとかない?」
「……あっ…」
目を覗きこまれ、ナルトの目に力がよみがえる。
「やっ!」
今いる場所がどこなのか…。ナルトは辺りを見回して、ゾクリと、身体を震わせた。
逃げようと。
ただ逃げようと…。
昨夜行われた蛮行に、身体が思い出す前に。
「ナルトっ!!」
突然動き出したナルト。しかし、ベッドから転げ落ちるようにしてカカシの手から逃れた後ナルトはそこに蹲ってしまった。下腹を抱え、唸るナルトにカカシは慌てる。
汗ばんだ背中に手をあて、嫌がるナルトを無理やりベッドに寝かしつけた。
「やだっ!やだってば…!…あっ、…つう、う〜…」
「ごめんね、ナルト。でも、大人しくして。ね?お願いだから…っ」
弱々しく抵抗を見せるナルトを宥めながら、汗で湿った服を脱がせにかかったカカシはナルトの身体に赤い痣があることに気づいた。
(な、に…コレ)
これはどう見たって、キスマークだ。性に経験豊富なカカシは確信を持って言える。
「!」
もしやと思い、カカシはナルトの下肢を覆う布をすべて剥ぎ取った。
「せんせっ?!」
戸惑ったナルトの声を耳にカカシは閉じ合わさっていたナルトの足を押し開く。
「…っ…」
図らずも昨夜と同じ格好、状況に陥っていることにカカシは知らない。だが、ナルトは知っている。奥まった、後ろに何を入れられたのか。そこに与えられた痛みと悲しみ。また、そこが同じ人の手によって開かれようとしていた。
「っ…、」
赤ちゃんのおしめを変えるような恥ずかしい格好。その体勢にナルトは羞恥よりも怯えに身を包ませた。その怯えを気づいてないわけではないが、今のカカシにとってそんなことはどうでもよかった。
ただナルトが誰かと関係を持っている、その事実を確かめたかった。
ぐいっと開かせた後孔にカカシはためらわずに突きたてた。
ぐちゅ、ぐちゅっと音を立てて溢れ出る白い液体。
「や、あっ。…ア、アァっ…」
か細い悲鳴が上がるも、カカシは無視した。
ただひたすらナルトの後孔の奥に残っていた精液を掻きだすことにだけ集中していた。
「ヤダァ…。…ひ、ぃ…っ、い…たぁ…あ……せんせ、ぇー…。やめて」
「……ダメだよナルト……」
「ふっ、あぁぁ…っ」
冷たい眼差しをナルトに向けカカシは嫉妬をぶつける。
鉤状にした指が何度もナルトの中をこすった。
(一体誰がっ!誰がこの子を抱いたっ)
ナルトの後孔は微かに残った精液と挿入時に傷つけたのだろう、乾ききっていない血でべったりと汚されていた。
「せんせー…っ。もう、やあっ!」
溢れて、カカシの指に纏わり付く白濁したもの。それはナルトの内股も濡らし、あたかも今カカシによって犯されたように見える。
「ふ、ううっ……」
痛みに涙で顔を汚し、唇を戦慄かせているナルトにカカシは今更ながらにやり過ぎたことに顔を顰めた。
「ごめん…、ナルト」
ガタガタと震えだすナルトに顔を青褪めさせたカカシはすまなさそうに目を伏せ謝った。
しかしコレだけは聞いておきたかった。
「……一体、誰がこんなことしたの…?」
「……っ」
ナルトは答えない。
だが、カカシはここで引き下がる気はなく、嫌われてもいいからこの残酷な質問に答えて欲しかった。
「ね、ナルト…」
答えて…。
カカシの呟きはナルトの耳元に落とされた。
ナルトは何度か小さく瞬きを繰り返し、乾いた唇を湿らせた。
そして、不安げだが今日はじめてカカシに視線を投げかけた。
「……
先生
…」
「うん」
小さく答えるナルトにカカシは頷いて続きを促す。
しかし、次のナルトの言葉にカカシは衝撃を受けることになる。
「…カ・カシ…先生が……、昨日…俺に…っ…」
「!!」
(え……。それって、どういう……)
どういう意味もナイ。
ナルトはカカシにやられたのだと言ったのだ。
「せん、せい…」
「……それ……ホント、に?」
コクっと静かに頷くナルト。
瞬間、カカシの目の周りが暗くなった。
思い当たる節がない。
……といえば嘘で。
カカシはひとつの可能性に目を見開いた。
夢であるとばかり思っていた、アノ行為。
「うそ……。アレって、」
カカシは愕然とした。
アノ夢のような快感と温かい肌はホンモノだったのだ。
「……」
項垂れ、目を固く閉じ合わせたカカシ。
ナルトは閉じていた目をうっすらと開け、そんな苦渋に満ちたカカシの顔を見た。
ぼーっと、見つめ、キラリと光る頬。
「……
せんせい
」
ナルトは静かにそれを拭った。
「……ナルト」
「…先生は……」
「うん…」
「先生は……俺のこと、好きだってば…?」
「……!」
何故、そう問うのか不思議だった。
何故、そんなに穏やかに見てくれるのか不思議だった。
言いたくて、言えなかった一言。
カカシは泣き笑いのように口を歪めた。
「……うん。好きだよ…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……、よかった…ぁー……」
「な、ると…?」
暫くの沈黙の後、
花が綻ぶとはこういうことを言うのだろう。ボロボロと大粒の涙を零しながら見事な、今まで見たこともない笑顔を見せられカカシは衝撃に目を瞠る。
受け入れられることなど、思いもしなかった。
きっと実らない恋だろうと。
なのに、この子は―――
「ナルトは…、先生のこと……好きなの?」
縋るように問いかければ、
無言で小さく頷くナルト。
カカシはたまらず、ナルトに口付けた。
静かに、啄むような小鳥のようなキス。
「……ナルト……先生のこと…許してくれる?」
もう一度願いのように聞けば、
それもまた無言に小さく頷くナルト。
いつまでたってもカカシはナルトから離れなかった。
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あの時
行為を強要させられたあの晩。
カカシがひっそりと呟いた言葉。
きっとあの言葉がなければナルトはカカシのことを許せなかっただろう……
そして
きっとあの言葉がなければ自分の気持ちに気づかなかったのだろう……
大事な言葉。
それは、先生が忘れていても、自分が憶えておこう。
カカシ先生が言った、最大の告白を。
「 」
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作者余談・・・
なんっすか、コレ…。はぁあ〜っ。意味わかんねぇ〜…。中途半端〜〜…っ!
書いてて、途中からおかしくなってやんの…ぶひぃ〜〜〜っ!!やっぱ、駄目ね。うちって。
何を言いたいのか分かんない。こんな感じになるはずじゃなかったのに…。
勉強し直してきます。逝ってきます……
誤字脱字があったらごめんなさい! ><
2004年5月16日 改訂済
ナルトに言ったカカシの言葉が気になる人は探してやってください。このページにあります。まぁ、探したからといっていいものではないんで……ビクビクビク。