初触
分かっていたんだ
知っていたんだ
この気持ちの意味を
最初は五月蝿い奴だと、馬鹿な奴だと、
そう思っていた
なのに何時からか
いつも自分の目の範囲に入っていないと
落ち着かない気持ちになっていた
それは今 良くなるどころか悪くなる一方で
それこそ、
他の奴の目にアイツの姿が入っているかと思うと……
++初触〜茎〜++ 04
サクリ、サクリ。
と雪を食む音だけがカカシの耳に聴こえてくる。
カカシはナルトと別れた場所へと来ていた。
そこからナルトが雪崩によって流されたと思われる方向へとあたりをつけ、歩を進めた。
カカシが自ら立てる音しか存在しない中、独り深い溜め息を零した。
カカシはサスケたちに余裕ぶった態度を見せていたが内心、ナルトの安否を焦る気持ちでいっぱいだった。
―――
まったく、アイツときたら。
オレを心配させることだけは上手い…
まだまだサクラやサスケに比べ、忍術やチャクラのコントロールに不安のあるナルトだったが、カカシに関することにだけは、そこらの上忍ら……いや、火影をも凌ぐ程長けていた。
ただ一人、例外を挙げれば……
―――
先生…
カカシはふと浮かんだ四代目火影の、ナルトの父親である自分の恩師の少し怒った顔を想い、苦笑した。
「この情況を知ったならば、貴方はなんて言うんでしょうかね…?」
恩師の愛息であるナルトに想いを寄せているとなったならば…。それも、情欲を伴った想い。
きっと彼は怒るに違いない。
カカシくぅ〜ん?!コレはどういうことなのかなぁあっ!?
彼が生きていたならば。
きっと眉を顰め、大事にナルトをその腕の中に大事に抱き締め、カカシを睨んでいるだろう。
そして、二度とこの腕に抱き締めさせてくれない、そんな感じがした。
そんな恩師の容易な反応が想像でき、カカシはまた苦笑を漏らした。
―――
それでもオレはナルトを奪いに行くんだろうね
考え事をしていたせいでいつの間にか足を止めていたらしい。
カカシは気を引き締めなおすと、行方の知れないナルトを捜しだすために歩みを再開した。
* * * * * *
「あっ、サスケ君」
サクラはカカシを追って一瞬姿の見えなくなっていたサスケの姿にほっとし、声を上げた。
ナルトが行方不明になって、そのナルトを見つけ出す為に班長であるカカシが居なくなり、この見知らぬ土地で一瞬ではあるがサスケの姿までもが見えなくなってしまって、サクラは少しばかり心細い気持ちとなっていた。
しかしそんなサクラの気持ちを知っているはずもなく、サスケはサクラの呼びかけに無言で答えると、颯爽と備え付けの椅子に腰掛けた。
「サスケ君…。……あ、そ、そうだ。
ね、のど渇いたでしょ?何か飲み物貰ってくるね!待っててっ」
ひどく機嫌が悪そうな雰囲気を纏っているサスケにサクラはごくり、と唾を飲み込むと、理由は分からないが何とかサスケを和ませようと声を掛けた。
しかし、備え付けの水差しの中はからっぽであったため、サクラは急いでその空の水差しを抱えた。
サスケはまたしても、それに無言でチラリと横目にサクラが飲み物を貰いに部屋を出て行くのを見送った。
「ええっと〜…受けつけ、受けつけ」
高級な宿屋というのも困りものである。
広い館内にサクラはもう少しで迷子になりそうになった。
ボロく狭い宿屋というのも困るが、此方のほうが始末が悪いような気がする。
広いだけでなく、迷路のように複雑な通路に初めてきたお客は絶対に戸惑うに違いない。
そのためもあってか、通路のいたるところに案内板が掛けられていた。
―――
カカシ先生ってばよく迷わず部屋に着いたわよね
サクラは少し、カカシのことを見直し思った。
サクラはそれから数分後、案内板を頼りに雪永荘の入り口、受け付け所に辿り着いたのだった。
「すみませ〜ん」
走り回ってやっと見つかったカウンターに声を掛けると中から男が出てきた。
「はい、なんでございましょうか?」
男は先程カカシを相手にしていた男だった。
礼儀の行き届いた仕草で礼をし、サクラに品の良い笑みを見せた。
「あのっ、これ。お水が入ってなかったものですから…」
男はサクラの手元にある水差しを見、宿側として失態をやらかしたことに気付くと慌てたように頭を下げた。
「ああっ。申し訳ありませんでした。すぐに用意しますので少々お待ち下さい」
「はい」
水差しをサクラから受け取り、奥へと引っ込んだ男はそれから十数秒で戻ってき、カウンターから出てきた。
「大変申し訳ございませんでした。さ、お部屋まで私がお持ちいたしましょう」
「ありがとうございます」
ありがたい申し出にサクラはホッとしたように笑い、頷いた。
実際、もう一度その重くなった水差しを抱えて、館内を歩き回るのは勘弁したかっ
た。複雑な通路をそう簡単に覚えているわけでもなく、サスケの待つ部屋に辿り
着くにはまた迷うことは目に見えていた。
それがどうだろう。
前を行く宿の男は、案内板を見るわけでもなくすいすいとこの複雑な通路を進んで行き、ものの数分もしないうちにサクラを部屋へと導いたのだ。
―――さすが、この宿で働いている人よね…
サクラは目の前に居る男を感心の眼差しで見た。
「サスケくん、お待たせ」
サクラは部屋に入り、サスケに声を掛けた。
ここまで案内してくれた男は水を注いだコップ二つをテーブルの上に置くと、静かに退出して行った。
サクラはそれへ礼を述べて、置いてあったコップを手に取り、先から窓際から動かないサスケの元へと寄った。
「サスケ君。どうしたの?」
真剣な眼差しで開け放たれたカーテンの隙間から、サスケは窓の下を見下ろしていた。
「サクラ、あれ見てみろ」
「え?」
顎をしゃくって示す場所を見遣れば、
「あれって…、ここの主人のイタミさんじゃないの?あんな所で何してんのかしら」
サクラたちが見下ろすその場所は宿の裏側となっており、普段あまり人が寄らなさそうな場所であった。
そこに、この宿の主人イタミは一人ではなく何者かとひっそりと、隠れるようにして話をしていた。
随分と怪しいものである。
「あそこでもう、十分も話している」
サスケはサクラからコップを受け取り、水を含んだ。
咽喉に潤いが満ち、溜め息が零れる。
「十分…?だったらあんな寒い外で話さなくても中で話せばいいのに」
具体的な数字にサクラは訝しげに呟く。
「臭いなあのイタミっていう野郎」
「あ、話が終わったみたい」
苦々しく言うサスケ。
するとやっと話がまとまったのか、こそこそと蜘蛛の子が散るようにイタミは踵を返し、宿の中へと入っていった。
しかしまだ、姿の見えない何者かはそこを動かず…
訝しげにサスケとサクラはその人影を覗き込んだ途端、
「!?こっち見てやがるっ」
強い、刺すような視線を感じ取り、サスケとサクラは急いで身体をしゃがめた。
「何者だ?アイツ」
サスケは眉を顰め、こっそりと窓枠から外の様子を窺った。
そして、暫くして。
木の影となって見えなかった、イタミの話し相手が太陽の下に姿を現した。
その鋭い眼は辺りを注意深く見回すと、素早い動きで宿の裏側から繋がる山へと姿を消した。
一瞬のことであった。
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作者余談・・・
え〜……、なんつーか。主人公どうしった?!って感じですよね…。
自分でもこれ書いてて、思わず 「これってカカナルっ??」 って突っ込んじゃってます。 ああ、もうっ。
全然、カカナルじゃないっ! ホモなかほりもしませんよっ!!
次は…っ!次こそはっ!!(でも、また作品集につきっきりになるんで、更新暫くできそうにないですね…タラリ。)
誤字脱字あったら、すみませんっ ><