じぃじといっしょ




夜明けの夢で、俺は冷たい夢を見た。


暗闇の中、裸足のまま立ち尽くす、14歳の俺。


言葉もなく、ただ唇を噛み締めて………



頬を伝う涙だけが暖かい

そんな、冷たい夢を―――





木ノ葉の隠れ里、三代目火影の邸宅。
典型的な日本家屋の邸宅には、縁側とそれに面する見事な庭がある。
その庭は昨日降った雪で白粉を被ったように真っ白だ。
ガラス窓を通しても冷気が伝わるような夜だった。
三代目は独り、片手に湯飲みを持ちながら静かに庭を眺めていた。
妻は既に亡い。新年の挨拶に来ていた息子夫婦も、嫁が妊娠中で無理はさせられないとのことで早々に帰っていた。
今年中には初孫が生まれる。己もとうとう本当に爺だ。
それを思って、三代目は思わず頬を緩めた。
手元の湯飲みから、ゆっくりと茶を啜る。
新年だというのに、手元にあるのが酒でないことを少しばかり残念に思いながら、湯飲みを盆に戻した時だった。
庭の方で感じる小さな気配。
がらり、と引き戸を引けば、一気に部屋の中に冷気が流れ込んでくる。

「じぃじ〜」

可愛らしい声と共に雪の中を駆けて来たのは、ちいさな金色の子供。
白いコートに橙色のマフラーと同じ色の手袋に包まれたむくむくの姿が愛らしい。
白い頬は寒さの為に林檎のように真っ赤だ。
それでも、好奇心に彩られた蒼い瞳はどこまでも澄んでいる。

「おぉ、ナルト。よぉ来たよぉ来た」

その姿を認めると、三代目は一気に相好を崩した。
金色の子供はうずまきナルト。
四代目火影の一人息子であり、今はまだ孫のいない三代目にとっては、本当の孫のような存在だ。

「じぃじ、おしょと、まっしよだってば!」
「そうじゃのぉ、随分積もったからの」

雪が嬉しいのか、やや興奮気味のナルトの身体を抱き上げて、三代目は縁側から部屋へと招き入れた。

「おぉ、重くなった」
「なゆと、おっきくなったもん」

えへん、とばかりに誇らしげに胸を張る姿も愛らしく、三代目はそうかそうかと笑顔で相槌を打つ。
その時、ナルトが付けた足跡を辿るようにやって来た影が一つ。

「コラ、そんなに走ったら転んじゃうでしょ」
「おとーしゃん」

ナルトの後から少々不機嫌な様子でやって来たのは、正真正銘、木ノ葉の里長、四代目火影。
実父であることを感じさせる、ナルトと同じ金髪に、同じ碧眼。
ただ、ナルトが子供らしい愛らしさいっぱいの顔立ちであるのに対し、父である四代目は凛とした美貌の持ち主だ。

「それに、ちゃんと玄関から入らなきゃダメ」

自分を振り切って駆けて行ってしまったナルトを、四代目はメッとばかりに軽く窘め、三代目の腕からナルトを受け取った。
そこには、自分を置いて行ってしまったことに対する嫉妬も幾分含まれていたのだが、ナルトにそれがわかるはずも無い。

「じぃじ、ごめんしゃいなの」

途端にしゅんとして素直に謝るナルトに、三代目は苦笑した。

「別に構わんのだがな。まぁよい、改めて玄関から入っておいで」

三代目の言葉に、四代目はナルトを抱いたまま玄関へと回っていく。
それを迎えるために、三代目もまた、部屋を出て玄関へと向かった。








「三代目、明けましておめでとうございます」
「あけましておめーとごじゃいましゅ」

改めて、部屋に通された四代目は片膝を付き、三代目に向かって新年の挨拶をした。
それを横目で見ていたナルトは見よう見まねで同じようにペコリと頭を下げる。

「そう、畏まらんでもよい」
「一応礼儀ですからね」
「ならば、一応礼儀なのだから、諸大名への挨拶回りもしっかりな」
「・・・わかってます」

実を言えば、三代目は四代目が不機嫌な理由がわかっていた。
諸大名への挨拶回りは例年、里長の一年最初の仕事と決まっている。
昨年までは、三代目が行っていたその挨拶回りを、そろそろ四代目にやらせた方が良いだろうというご意見番の意見を汲んで、今年からは四代目が挨拶回りに出向くことになったのだった。
いつかはやらなければならないこととはいえ、今回のことはつい三日前の会議で決まったばかり。
四代目は愛息子と過ごすはずだった時間を潰されて不機嫌になっているのだった。
これが里長かと疑いたくなるような子供じみた振る舞いだが、その癖、公の場へ出れば、流石木ノ葉の火影よと賞賛されるのだから、分厚い猫を被っていることは間違いない。それも一匹や二匹ではなかろう。

「失礼にならん程度に挨拶してこい」
「里の為にならないような事はしませんよ」

この男がこう言ったからには、それはそれは立派に四代目火影としての役割を果たしてくれるだろうと三代目は安堵した。
譬え、それが表面上のことであったとしてもだ。
要は形式が大事なのだから。

「おとーしゃん?じぃじ?」

ナルトはといえば、きょとんとして、父と三代目の顔を見比べている。

「じゃあ、すみませんがナルトをお願いします」
「わかっておる」
「おとーしゃん、もういっちゃうってば?」

ふぇ、とナルトが眉を寄せて、父の膝に抱きついた。
『じぃじとお留守番しててね』
そう言われて連れてこられて来たのは覚えているけれど、こんなに早くお父さんが行ってしまうなんて思っても見なかったナルトは、寂しさでスン、と鼻を鳴らした。
それに大好きなカカシも三日前から任務でいないのだ。

「うん、明日は朝早いから、今日のうちに出かけなきゃならないんだよ」

同じ火の国の中とは言え、この国は広い。
国の主要な大名に挨拶周りするだけでかなりの時間を要するのだ。
ごめんね、とふわふわの髪を撫でてやれば、ナルトはぐずる様に抱きついた膝に頬を擦り付ける。
そんなナルトの可愛い姿に、四代目は困ってしまう。
このまま可愛いナルトと一緒にいてあげたいけれど、今回ばかりは仕事を放りだすことは出来ない。
たかが挨拶とはいえ、礼を欠けば、火の国と木ノ葉の里の関係が悪化しないとは言い切れない。

「ナルトは、爺といっしょでも大丈夫じゃろう?」
「・・・なゆと、じぃじと、いいこにしてゆ」

三代目の言葉に、ナルトは健気にも泣かない様に口を引き結ぶ。

「ナルトはいいコだね。お土産買ってくるからね」

膝に抱きついていたナルトを抱き上げると、四代目は微笑んでそう言った。
少しでも喜んでくれればと思っての言葉だったのだが、ナルトは小さく首を振った。

「なゆと、おみやげ、いやない」
「どうして?」
「いやないから、はやくかえってきてほしーの」

きゅうっと首筋に抱きついてくる小さな手を感じながら、四代目は深い溜息を吐いた。

「ナルト・・・」

なんでこんなに可愛いのっ!?
愛息子の愛らしさに、四代目、激しく胸キュンである。
もう火影やめちゃおっかな・・・なんて危険な考えが頭を過ぎる。
四代目の危険な考えが手に取るようにわかってしまった三代目が窘めてやろうと口を開きかけた時。

「四代目、そろそろお時間ですが」

音も立てずに二人の暗部が姿を現した。
二人は三代目に黙って目礼をし、四代目の前に跪く。
暗部特有の動物の面を被った姿に、四代目は僅かに眉を顰めた。

「わかったよ」

もう一度きゅっと腕の中のナルトを抱き締めると、四代目は名残惜しそうに、三代目へナルトを手渡した。

「気をつけて行って来い」
「ナルト、行って来るからね」
「・・・いってらっしゃいってば」

ナルトが椛のような手を振ったのを確認してから、四代目と二人の暗部は煙を残して消えた。

「おとーしゃん・・・いっちゃった・・・」
「ナルトはいいコだから、お父さんが帰ってくるまで我慢できるじゃろ?」
「がまんすゆ」
「今日は爺と寝ような」
「ん」

まだ、ふにゃと悲しそうな顔をしているナルトを三代目は軽く揺すってあやす。
どうしたものかと考えた末、三代目はナルトを抱いたまま、パチパチと火の爆ぜる古い薪ストーブの前に連れて行った。

「あったかいってばー」

三代目は徐にストーブの上に網を載せた。
台所に行き、テーブルの上に上がっていた木箱の中から、四角い白い塊をいくつか取り出す。
それを持ってストーブの前に戻り、網の上に乗せ、ついでのように一緒に持ってきた小鍋も網の脇に乗せた。
ナルトは三代目のすることをじっと見ていたが、そのうちなにやら甘い匂いがしてきて、三代目の服をくいくいと引っ張った。

「じぃじ?なに?」
「どれ、ナルト。正月じゃから、お汁粉でも食べるか」

三代目が笑いながらそう言うと、途端にナルトの瞳が輝いた。

「おしゆこ、たべゆー!」

お汁粉はナルトの大好物。
しかも、普段なら寝る前になど食べさせては貰えない。

「そうかそうか」

三代目は満足そうに餡子を溶かし始め、ナルトはといえば、一瞬の内に先程まで感じていた寂しさを吹き飛ばしたのだった。








「あぁ・・・こんな事なら、カカシを国外任務に出さなきゃよかったなぁ・・・」

四代目の呟きに、傍を走っていた付き人の暗部二人が微かに肩を揺らした。
カカシとは、彼ら二人と同じ暗殺戦術特殊部隊に所属する『はたけカカシ』のことであろう。
彼が四代目火影からの指令により五日間の国外任務に出ていることは暗部の中ではよく知られたことだった。
何故なら、年末から年明けまでは依頼も少なく、ましてや国外任務に出るものなど殆どいないからだ。

実は四代目、ナルトとの二人きりの正月休みを邪魔されるのがイヤで、年末から正月三が日の間、カカシを国外任務に行かせていた。
あからさまな職権乱用である。
しかしながら、ナルトを一人ぼっちにして寂しい思いをさせるくらいならば、変態ショタのカカシだとしても、ナルトの為に里に置いておけばよかったと、今更ながら四代目は思った。

―やはり、私情か・・・。

二人の暗部の胸をカカシへの同情の念が過ぎる。
四代目火影の愛息子への溺愛ぶりは有名で、その愛息子であるナルトがカカシに懐いていることもまた有名である。
ナルトを挟んで、里内で事件を起こしたのは一度や二度ではない。
それでいて、忍者として、火影としての四代目はすこぶる優秀なのだから始末に終えない。

「急ぐよ」
「御意」

二人は四代目を挟んで走りながら、決してうずまきナルトに害を与えるようなことだけはすまいと、固く心に誓った。






* * *





耳の横を冷たい空気が走る。
周りの景色も、今はもう緑色の帯にしか見えない。
布越しに入ってくる冷気が肺を急激に冷やして軽く咳き込んだ。

「・・・見えた・・・」

ゆっくりと足を止めれば、目の前に広がるは聳え立つ山脈と、霧のように山々を包む雲の波。
雲隠れの里。
忍五大国の一つであり、雷影が治める里だ。

「・・・きしょ・・・もう丸二日もナルトの顔見てない・・・声聞いてない・・・」

ぼそり、と呟くのは、木ノ葉が誇るエリート忍者はたけカカシ。
何処か荒んだ目をしているのは気の所為ではない。
暗部に所属している彼は、四代目火影から直接下された命を受けて、此処、雲隠れの里まで書状を届ける任務に就いていた。

「あぁ・・・ナルト何してるんだろ・・・。一緒に初詣に行こうって約束してたのになぁ・・・」

思い出すのは愛しいあのコの事ばかり。
綺麗な蒼い瞳に、蜂蜜色のふわふわの髪。
ふくふくのほっぺに、さくらんぼの唇。
甘い匂いのする柔らかい身体。

『かぁし』

自分を呼ぶ可愛い声。
自分に向けられる可愛い笑顔。

「・・・早く帰って、ぎゅうってしてぇ・・・」

ある意味、かなり危険な台詞を呟きながら、カカシは雲隠れの里の中枢へと足を向けた。
雲に煙る道無き道を行けば、やがて、山肌を上手く利用した強固な城壁が聳え立つ場所に出る。
一際大きな正門を軽く叩けば、城壁の上の方から門番が顔を出した。
カカシは無言で通行証を差し出す。

「どうぞ」

ギギ、と重そうな音がして細く門が開いた。
ようやく中へと招き入れられたカカシの前に案内人と思われる男がひとり立っていた。

「こちらへ」

曲がりくねった細い洞窟へと誘われる。
中は薄暗く、案内人の持った灯が無ければ、数メートル先も見えないくらいだ。
譬え、同盟国の使者であっても、里内部は見せられないということか。
単調な洞窟の中を歩き続け、ようやく向こう側に扉が見えてきた。
通された部屋は、応接室のようなものらしい。重厚な机と椅子が設えてある。

「少々お待ちください」

カカシは促された椅子へは腰掛けずに、立ったまま待ち人が来るのを待った。
程なくして、奥の扉から大柄な人影が現れた。

「待たせたね」

数人の部下を連れて現れたのは、雲隠れの里長、雷影だった。
雷影は他国の里長に比べれば幾分若く、同じく若くして火影となった四代目とは懇意の仲だ。
個人的な書状を交わしたりもしているらしく、四代目の弟子でもあるカカシとも知らない仲ではない。
膝を付いて礼をとったカカシに、雷影は腰掛けるようにと促した。

「ご苦労だった。四代目火影はご健勝かね?」
「はい、お陰様で」
「頂こう」

雷影は手を差し出して、カカシの手から書状を受け取った。
パラ、と書状を解いた雷影は、一瞬目を見開いて、それから小さく噴出した。

「?」

噴出すような内容が、重要な書状に書かれているのだろうか。
怪訝そうな顔をするカカシに、雷影は笑いを収められないままに、カカシに書状を手渡した。

「重要書状って・・・コレ・・・」






* * *





次の日の午後。
三代目火影宅には、なんとも和やかな声が響いていた。

「じぃじ、もいっかいしてー」
「よいぞ、・・・ほれっ」
「うわ〜・・・くるくるだってばよ〜」

目の前で回る独楽にナルトは瞳を輝かせる。
三代目の家にはナルトの見たことのないおもちゃがたくさんあって、ナルトをすこぶる喜ばせていた。

独楽回し、ビー玉投げ、凧揚げにメンコ。
どれもこれも楽しくて、ナルトは父もカカシも居ない寂しさなど感じる間も無くなっていた。
あんなに恋しがった父のコトもすっかり忘れ去っている。

「じぃじ!次はこえ!」
「・・・ナルト、ちょっと待て」
「う?」

耳を澄ませる様に突然動きを止めた三代目を、ナルトは不思議そうに見上げた。

「ナルト、お父さんが帰ってきたようじゃぞ」
「おとーしゃん?」

三代目の言葉に、ナルトが瞳を輝かせた。
その途端。

―ガチャンッ!ガシャ!ドガシャっ!

何処からか聞こえてきた破滅的な音に、三代目は顔を引き攣らせた。

「ナルト、ただいま〜〜!!!!」
「あ、おとーしゃん、おかえりなしゃいってば〜!」
「ン〜可愛い、ナルト〜っ!ごめんね〜、寂しかったね〜」

もう離れないよっ!
そう言って、ぎゅうぎゅうナルトを抱き締める四代目は、傍で見ていても呆れるくらいナルトにメロメロ。
まさに猫にマタタビ。
四代目にナルトである。

「お主・・・どうやって入ってくれば、あんな音が立てられるのじゃ・・・」
「あ〜、すみません〜。急いで帰って来たので、少々ドアを傷つけてしまいました」

まるで悪びれないその様子に、三代目の額に青筋が浮く。
此処は言ってやらねばなるまいと、既にナルトしか目に入っていない馬鹿親に向かって、三代目が口を開きかけたその時。

「先生っ!」

ばーんっ!と激しい音を立てて、三代目宅のガラス戸が開けられた。
其処に立っていたのは、メラメラとチャクラを立ち上らせたカカシだった。
その勢いに、ピシッ、とガラス戸に皹が入り、この馬鹿師弟は、何処まで我が家を壊す気なのかと三代目は青くなった。

「あ、かぁし〜!」
「ナルト・・・」

ナルトの姿を目にすると、カカシはほわん、と一瞬表情を崩した。
会いたくて会いたくて堪らなかった愛しいコ。

「あ、カカシ随分早かったねぇ。書状届けてきた?」
「・・・届けましたよ・・・」

しかし、四代目ののほほんとした顔を見た途端、カカシの額に青筋が浮いた。

「先生!どういうことですか!!あの書状!」
「なんだよ、帰って来て早々騒がしいねぇ」

ねぇ、ナルト?
そう言って、全く取り合おうとしない四代目の態度に、とうとうカカシが切れた。


「あの書状・・・っ!!ただの年賀状じゃないですか!!!!!」


カカシの手から、弾丸のような速さで巻物が投げつけられた。
バサっと四代目の前に、広げられた書状。
それは、カカシが雷影に届けに行ったはずの書状だった。
あら、とばかりに、目の前に広げられた書状を見て、四代目は誤魔化す様に苦笑いをし、その中身を覗き込んだ三代目は絶句した。

そこにはデカデカと『謹賀新年』の文字。
これの何処が重要書状だというのか。

「・・・じゅ、重要書状だよ・・・火影と雷影の関係良好に一役買ってるでしょ・・・?」

ははは、といささか力ない笑いで、苦しい言い訳をする四代目。

「お主、そんなことにカカシを使ったのか・・・」

―鬼じゃな・・・。

呆れ返った三代目が言えば、それを見ていたナルトの眉間に皺が寄った。

「おとーしゃん、かぁしにいじわるしたってば・・・」
「違・・・っ違うよっ」

ナルトのジト目に、四代目があわあわと言い訳をする。
ちょっと涙目になっているのが情けないことこの上ない。

「そうだよ、ナルト。酷いよね〜?」

ここぞとばかりに、カカシは四代目からナルトを奪い去り、ワザとらしく泣きまねをしてみせる。
はっきり言って気持ち悪い。
しかし、優しいナルトはそれを信じ切っている。

「かぁし、かわいしょなの・・・」

いいこいいこと、ナルトは小さな手でカカシの頭を撫でた。
そして、キッとあまり迫力の無い、どちらかと言えばやっぱり可愛い顔で、四代目をにらみ付けたかと思うと、一喝。

「おとーしゃん、きやい!」

ぷい。
そっぽを向いてしまったナルトに、四代目は蒼ざめ、カカシはにやりと笑った。

「出た・・・最強兵器じゃ・・・」

三代目は厄介なことになったと、深い溜息を吐いた。

「なゆと、かぁしのおうちにいく!」
「な、ナルト〜〜〜っ!」
「おとーしゃん、だいきやいなのっ!」

さわっちゃめっ!
そう言って、ナルトは伸ばされた父の手をぱちん、と叩き落した。
コレには四代目、激しく傷ついた。

「な、な、な、なるとぉ〜〜〜っっ!!!」

「おとーしゃんなんて、しやないってば!かぁし、いこ」
「ナルト、遅くなっちゃったけど、今から初詣行こうか?」
「ん、かぁしといく」
「ねぇナルト、まだお帰りなさいのご挨拶してもらってないよ?」

カカシの言葉に、あ、と小さく声を上げたナルト。
にっこり笑うと、ちゅうっとカカシの唇にキスをした。

「かぁし、おかえりなしゃい」
「ん、いいコ。ただいま、ナルト」

ちゅ。

「かぁし、しゅき」
「オレもナルトが大好きだよ」

甘い恋人達の逢瀬には、誰も入り込むことは出来ない。

「じゃあ、行こうか」
「ん」
「ナルト、三代目にご挨拶して」
「じぃじ、おじゃましましたってば」

ペコリ。

「あ・・・あぁ、気をつけてな・・・」

可愛くお辞儀までされてしまっては、そう言うしかない。
後ろを振り返れば、四代目が見事に蒼ざめて固まっている。

―コレをワシにどうしろと・・・。

「・・・お主も・・・懲りんのぉ・・・」
「・・・ナルト・・・ナルト・・・ナルト・・・」

自業自得じゃ、という三代目の言葉も、魂が抜けた四代目には届かない。

「いい加減、子離れせい・・・」

なんとももっともな三代目の言葉が空しく響いた。






* * *





数日後。

ナルトが居なくなって意気消沈した四代目が全く仕事をしなくなってしまい、困った部下たちが揃ってぬいぐるみやらお菓子やらを持ってカカシ宅に押しかけた。

「なんとか、ナルト君を四代目の元に帰してくださいっ!」
「全く仕事にならないんですっ!」

必死になって抗議する多数の仲間達に、カカシは冷たい一瞥を向けた。

「え〜・・・恋人同士の同棲に口出しするのもどうかと思うよ?」
「どうせい?」
「ナルトはまだわからなくても大丈夫だよ〜。それより、ナルトどうする?そろそろ帰ってあげる?お父さん、寂しがってるみたいだよ」
「ん〜・・・しょうがないってばよ」

たくさんの贈り物に、可愛い笑顔を振りまきながらナルトがそう言うと、揃いに揃った忍たちが、深い深い安堵の溜息を吐いたのは言うまでも無い。


今年もナルトは木ノ葉で最強である。






end




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読後感想・・・
ありがとうございました〜っvv
吉田可南子さんの素敵な新年フリー小説です!このフリー小説のアドレスのついたメールを頂いた時には、嬉しさのあまり心の中で叫んだ青川です。
可南子さんの書かれるちびナルトはもうっ!可愛すぎてっ!!犯罪です!これじゃあ、カカシ先生じゃなくても、四代目でなくても、ナルトにメロメロになるのは仕方ないことですっ。かくいう私もメロメロですvV
さあ、可南子さんのサイトへ遊びに行ってみよう!!(素敵サイトからドウゾ☆)
イラストも上手いですよぉ〜♪

可南子さん、今年もよろしくお願いします!!